皆さんは「サクラ前線」という言葉をご存じですか?
暖かい南から、次第に北へサクラの開花が移動することを言いますね。
同じように、ホタルも元来、南のものですから(一説には中国南方の貴州・昆明が原産と言われています)、九州・鹿児島や沖縄では5月には飛び始め、やがて北日本の青森では7月中~下旬に飛ぶ姿が見られます。
最近では北海道の一部地域でも観測されるようになりました。このように次第に北へ飛翔が移動するさまを、ホタルネットワークでは「ホタル前線」と呼称することにしているのです。
ホタルの飛翔予測は可能です
ホタルがいつ、どこで、どのくらいの数が飛翔するのかは、事前に予測することができます。
サクラの開花・満開の時期と、ホタルの幼虫が上陸する時期が合致するので、この時期に幼虫の上陸を観測すれば、飛翔を予測するのはむずかしいことではないのです。川底にいた幼虫が、岸辺の土手をゆっくり登り、土のなかにもぐりこんでサナギとなり、45~50日後に成虫になって飛び始めるのです。
このタイムスケジュール・リズムは正確で、よほどの天候変化がないかぎり毎年、狂いはありません。
ですから4~5月上旬のサクラの開花・満開の時期に幼虫上陸の観測をしっかりすることが、飛翔の予測はとても大切なのです。
とくに初上陸の様子(時期、場所、数)を観測することが、飛翔予測をするためには不可欠です。
鳥取県内で飛翔が最初にみられる地域のひとつに南部町・金田地区がありますが、今年は4月2日に1匹の初上陸が、6日には100匹みられました。これをもとに予測すると、5月25日前後には100匹程度の飛翔が期待できるでしょう。
上陸観測の基本は?
観測には、毎年一定の範囲を決めてするのが良いでしょう。
場所もいつもホタルが飛んでいる流れの範囲を、例えば午後8~10時というように時間を決めて、目をこらして根気よく毎晩、続けると良いのです。
もちろん上陸は観測範囲以外の場所や時間でもみられますから、観測した幼虫の何かの飛翔数になるのが普通です。
できれば天候状況、水温、気温なども観測して、毎年データとして記録し蓄積しておくと、一定の傾向がわかります。
雨の夜が上陸には最適と言われます。幼虫には、気候を察知するなんらかのセンサーが備わっているのでしょう。自然界の持つ不思議な知恵と言ってよい現象です。
ただし単なる「おしめり」程度では、幼虫の冗句は望めません。
天敵や寒さを乗り越えて、成虫を目指すのですから、ホタルはけなげではありませんか。
ちょうど、この時期は田植えの準備など農繁期を迎えますから、観測する人を確保するのが難しいのですが、当番を決めるなど工夫してみてください。
幼虫は1mを1時間かけて、ゆっくり上陸するのです。弱い光ですから、しっかり見逃さないようにしましょう。
 
今年は気候が変!? 予測が難しい!?
今年の県内は、サクラが開花したあとに積雪があったり、寒い日があったりして、せっかく上陸した幼虫が土中で死んでしまっているのではないかと心配です。
また上陸は、初観測のあとには連日のように次第に数が増えるものですが、今年は初観測のあとに寒さが続いたり、雨の日がなかったりしたため、間隔をおいて上陸が散発的な地域もありました。
したがって飛翔も、例年ならば初飛翔のあと次第に数が増えて、やがてピークがあり、いわゆる山並みにカーブを描いていくのですが、今年はいつがピークなのか定かでない傾向になってしまうのではないでしょうか。
ですから、良く「今年はいつ頃が一番、飛ぶのですか?」という問い合わせがあるのですが、ピークの日にちを特定するのが難しいのです。
例年ならば平野部では6月10日前後、山間部では6月20日過ぎがピークなのですが、今年は例年並みか、むしろ1週間から10日ぐらい遅れるかもしれません。
ホタルの飛翔期間は、初飛翔から10日~2週間が通例です。
また1匹のホタルは、飛び出してから約10日で卵を産んで一生を終えます。
そのことを念頭に、以下に示した各地の予測情報を参考に鑑賞してください。
飛翔予測をウエブサイト上に掲載します
鳥取県ネットワークでは今年から、県内各地の上陸情報をまとめて、飛翔予測を割り出し、場所や時期、数を県内地図に落として「ホタル前線」としてウエブサイト上に掲載し、県民に公開するように準備しています。
皆さんから是非、各地の情報をお寄せください。