川・水辺の掃除は厳禁
 ホタルはきれいな川・水辺を好むと一般に言われています。本当にそうなのでしょうか?

 実際はpH4程度の汚れが良いとされています。ホタルの幼虫はカワニナ(巻貝)の肉部分を溶かして、その体液を吸う肉食ですが、そのカワニナは川藻を食べています。ですから藻が育つ程度に川に栄養がなくてはなりません。野菜くずや牛糞が流れ込んでいる方がいいのです。

 ホタルが棲める水質はヤマトシジミやゲンジボタル が住める「水質階級Ⅱ」なのです。
 もう一つ、この時期は川・水辺の清掃はすべきではありません。
 なぜならホタルの幼虫は水中に生きていて、人が水中に入ってゴミをかたずけたり清掃をすると、幼虫を踏みつけたり驚かすことになってしまいます。

 清掃は4月末から5月の、幼虫がサナギになるために土手の上に上陸するのを見届けてからにすべきなのです。


樗谿(おうちだに)公園のホタル 飛翔の様子/鳥取市
幼虫の上陸を観測
 平成24年度の冬は極端に雪が少なく、その故に、昆虫や農作物に影響があり、春が早く来ると言われています。
 ホタルは成虫だけが光るわけではありません。幼虫も卵も弱いながら、淡い青白くちゃんと光っています。
 鳥取県では、4月初旬から4月末にかけて、水中から出て土手の土中をめざし、上陸するのです。幼虫の上陸は、昼間雨が降って生暖かい夜に水中から上陸していきます。サナギになって成虫になるためです。
 ゆっくりと1時間1m程度のスピードで光りながら上陸するのです。不思議なことに、サクラが満開になる4月中旬ころ、上陸のピークを迎え、約45~50日すると成虫になって飛び始めます。
 このリズムは毎年、変わりません。なにか特殊なセンサーを持っているのでしょうか。上陸を観測することは、飛翔の時期を予測できるので、毎年のリズムの観測はとても大事なのです。
 とくに初上陸を観測できれば、初飛翔をかなり正確に推測できることになります。ぜひ観測してみてください。観測ができましたら、鳥取県ホタルネットワーク(山岡)まで、日時、場所、上陸数を知らせてください。観測は、午後8時から10時ぐらいが良いでしょう。
 上陸は深夜から明け方まで続きますが、1匹観測できれば、実際の飛翔数はその5~10倍が期待できるのです。小さな光ですから、よく目を凝らしていないと見逃してしまいます。
清流にホタルは住まない!
 昔は、人とホタルは共生していました。清流にホタルが住むというのは、正確ではありません。
 昔は下水が整備されておらず、台所のお米のとぎ汁や野菜くずが川に流れ込んでいました。これが珪藻を繁茂させ、これをカワニナ等の巻貝の栄養となり、そのカワニナをホタルが捕食するというサイクルになっていました。だからホタルは人とともに住むと言われます。
 近年は、化学洗剤や農薬が川に流れ込み、ホタルをはじめ川中の生物を駆逐するほど、生育環境を破壊しています。
川の中に生える茅や葦を刈り取るのは控えたほうが良い!
 上流に大雨が降ったりすると川が増水してホタルの卵や幼虫が下流に流されてしまいます。茅や葦を景観が悪いと人が勝手に刈り取ると、ホタルやカワニナの避難場所がなくなるのです。
 またホタルが交尾する場所にもなっているのです。人の目で見た美観は、決してホタルにとってはむしろ迷惑なのです。どうしても刈り取るというのならば、ホタルの飛翔が終わり産卵して最低、1ケ月は間を置いてからにしましょう。刈り取るときに、せっかく卵から孵化していく大事な時に人の足で踏みつけてしまう危険性があるからです。
 また刈り取った茅や葦は、そのままその場所に置いておきましょう。それらは川の中で腐って、珪藻を育てる栄養になっていきます。他の場所にもっていき燃やしてしまえば、茅や葦に産み付けた卵もいっしょに燃やしてしまうことになりかねません。自然のサイクルは、うまく出来ているのです。
ホタルは肉食主義
 ヘイケボタルの餌となるヒメタニシは、比較的汚れた泥を好みます。水が濁っている池や川にはヒメタニシがいることが多いのです。
またゲンジボタルはカワニナを食べます。流れが比較的澄んでいるところにカワニナは住んでいます。たとえば落ち水のあるところは、酸素を吸収してカワニナには住みやすい環境になります。どちらのホタルも巻貝を溶かして吸うのです。

〈監修:山崎健一 県ホタルネット会長  文責:山岡憲樹〉
 
ホタルの生活史(ゲンジボタルの一生の場合)
幼虫時代に、盛んに餌(巻貝)を食べながら4回ほど脱皮を繰り返し秋、冬を越す。
(約9ヶ月間の水中生活)
発光が盛んになり活発に歩き回るといよいよ上陸そしてサナギとなる。
(土を固めてまゆを作り、その中に入り前蛹となり脱皮してサナギに変態)
産卵(産卵後20日ほどでふ化)
羽化(サナギから成虫になり光を明滅しながら飛び交う)・交尾、産卵後その一生を終える。
 
外来種の巻き貝「コモチカワツボ」が国内で急速に生息域を拡大しています。ゲンジボタルの幼虫が本来食べるカワニナの稚貝にそっくりで、間違えてホタル繁殖用に放流された可能性があります。コモチカワツボを餌にしたホタルの幼虫が成虫になる割合は、カワニナを餌にした場合の6分の1で、発光力も半分だといわれています。専門家によると「このままではゲンジボタルが激減する」くらい深刻な問題化しつつあります。
コモチカワツボはニュージーランド原産で体長約4ミリ。繁殖力が極めて強く80年代後半に日本に入り、東北から近畿、九州の一部まで広がっています。
カワニナで育てたオスが出す光は、平均6ルックスにたいしてコモチカワツボで育てたオスは3ルックスしかなかったとの実験報告もあります。発光は、交尾をする相手を探すメッセージで、メスは弱い光のオスを選びません。その結果、繁殖につながらず個体数の減少につながると考えられます。

コモチカワツボは見つけ次第駆除するのが理想的ですが、まずは発見された方は当ネットワークまで、発見場所、おおまかな数量等、御一報ください。駆除に関するアドバイスなどの対処・対策支援を行います。