2015年度 鳥取県ホタル前線 概況

1)例年より桜の開花が早かったことに象徴されるように、温暖な時期が早まり、そのことはホタルの幼虫初上陸が1~2週間程度は早くなっており(各地のデータは別ページに記載)飛翔時期を予測するのが困難となっています。例年並みとの観測もありますが、時期と数は可能性を示すことにしました。
2)佐治、岩美、河原は保護グループの組織化が完成しておらず、掲載を見合わせることにしました。
3)伯耆・吉長は報告がないため、同じく掲載を見合わせています。

2015年度 ホタル前線の結果総括

1)近年はエルニーニュなどの異常気象が常態化したために、幼虫の上陸や初飛翔の予測時期を確定することがより困難なことが多くなっています。これには幼虫上陸を4月下旬から5月上旬の時期に、精力的に観察活動を怠らずに実施することが重要だということを示しています。ただ、この時期は農繁期に当たり、県内各地の保護活動に取り組んでいる有志の方々にとって、田植えの準備に多忙な時期と重なっていて、実際の観察活動への大きな障害になっている。昼間の農業作業を終えて、疲れた身体で夜間のまだ肌寒い水辺を丹念に目を凝らして観察活動をすることは、熱意無くして出来るものではなく、後継の人材を育成することの急務であることを示しています。

2)また幼虫上陸観察から飛翔時期を推定する作業は、今まで経験に基づく知見を駆使して判断してきましたが、今後は気温、水温、気圧その他の複雑な気象条件やその土地特有の環境条件を総合的に判断して特定することが必要だということを意味しています。ある程度の許容範囲での時期のズレが生ずることはやむを得ないとしなければなりません。しかし鑑賞会の設定や事前の準備、観光業界への情報提供を考慮すれば、やはり制度の高い予測情報を出す必要があります。他県の取り組みも参考にしながら情報交換をすすめ、より精度の高い「ホタル前線」を構築する努力をしなければならないと考えています。

3)概して県内でも特に西部地域でのホタルの飛翔状況と、それにともなう各地の鑑賞会等の活発な活動が特筆されます。これは28年7月に誘致開催される第49回全国ホタル研究会よなご大会の開催に花を添えるものとなりました。またスポット的な飛翔が限定された場所から、地域全域に広がり始めていることは、「ホタルネットワーク」が当初から目指していた鳥取県を「ホタル王国」にしたいとの思いに通じるものと思います。かっての時代のように、初夏にはどこにいてもホタルが飛んでいる自然を取り戻すことに一歩ずつ着実に近づいています。

4)各地の総括文中にも触れているように、報告なし、活動実態なしという地域が存在しています。後継の中心者が育っていない等の事情はありますが、「ホタルネットワーク」として粘り強く組織再生を支援し、若い世代に人材を求め、確実に人とホタルが共生するよう努力していきます。